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2004.03.17

電子書籍に必要なもの

 10daybookの鈴木さんが書いた『 eBook時代 はじまる! 「電子の本」が変える読書革命』については以前紹介したが、その本に対して評論家の歌田明弘氏が意見を述べている。(出版ニュース2004年3月下旬号)
 記事のタイトルは「電子書籍に必要なもの」。

 鈴木さんは

見開き表現の必要性
画数の多い漢字やルビも表現できる高精細ディスプレイ

が電子書籍ビュアにとって必須の条件だと主張している。
 それに対して歌田氏は鈴木さん自身が体験として紹介している、電車の中でノートパソコン読書に熱中したエピソードを引き

しかし、この体験が意味しているのはまったく逆のことではないか。鈴木氏は、画数の多い漢字やふり仮名が表示されないノートパソコンでも没頭できたのだ。人々が本に没頭するのは、画数の多い漢字やふり仮名がきちんと読めるからではない。たんに中身がおもしろいからだ。

と疑問を呈している。そしてそれは

氏もまた出版人としての「職人性」に溺れて、読者にとって何がほんとうに必要なのかが見えていないのではないか。

と断じ、

氏の影響力が強いだけに、その考えにひそんでいるいくつもの矛盾に私は危惧を感じる。

と結ぶ。
 意見を述べる歌田氏と事業として成立させようとしている鈴木さんの間に立場の相違がある。だから歌田さんの異議に手放しでは賛成できない。しかし、少なくとも鈴木さんも本という形で意見を表明している以上、意見と意見の地平では歌田氏の指摘が正論だといってよいと思う。

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Comments

blog::TIAOのMAOです。
電子出版の動向は以前より関心がありましたが、いよいよイーブックリーダーが市場に出るわけで、これからは読者が自ら判断を下す。

これまで、文化論、技術論、ビジネス視点などから多くが語られてきたわけですが、意外と少なかったのが読者からの意見であり、さらに書き手である作家からの意見でした。

出版界はどうやら今の出版という権威構造を温存して、版権のベースを手放したくない。しかし、ぼくはこれまでの「万人のための出版」というものがこれから「万人によるパブリッシング」へと大きく変化していくのだと考えています。

その鍵は何か?

それは電子書籍をメディアと明確に認識した書き手の登場とそこから生まれてくる優れたコンテンツ=作品なのだと思います。

Posted by: MAO | 2004.03.25 at 08:53 AM

 MAOさんコメントありがとうございます。
 情報伝達技術の進展は情報を多くの人の手に開放してきました。だから「万人によるパブリッシング」というご意見は当然です。ただ私はそこにも情報のプロという存在がやはり必要な部分があると思っています。それが追求のテーマです。
 また現場にいる人間として出版界の蓄積された資産(人的・物的・制度的)から始めるしかないという立場です。
 新しいメディアを本当に活かすのは新しいメディアで育った人間でしょう。それは私も待ち望んでいることですね。

Posted by: Sarumaru | 2004.03.29 at 09:43 PM

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Tracked on 2004.03.29 at 11:24 PM

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